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Faites des bêtises, mais faites-les avec enthousiasme.

マジカルミライ2017に行ってきました

 《マジカルミライ》と言えば、インテックス大阪で開催された2014年に行ったきりで、それ以外の年はいつも関東で開催されているために毎年指を咥えては我慢をしていたわけです。今年のマジカルミライも、案の定、関東の〈幕張メッセ〉で開催。ただ、今年は《マジカルミライ》5周年ということで、5周年メモリアルチケットの抽選先行があったものですから、己の理性との交信を断って、受付期間の最終日にダメ元でSS席を申し込んでみたら、これが何と当選してしまいまして、思わず「うわあ」と歓喜と不安が入り混じった声を漏らしました。やべーよ、どーしよー。

 10,000円を入金したものの、イベントは9月頭の開催だし、チケットもまだ手元にあるわけではないですし、そもそも本当に行くのかどうか自分の中でもはっきりとしていないわけで、やきもきしていてもしんどいだけなので取り敢えず8月を迎えるまでは放っておいたのですが、8月中頃に遂にメモリアルチケットが届いた途端、東京行きの計画が現実味を帯びてきだして、えならぬプレッシャーに支配されるような形で、行きの飛行機と宿泊するホテルと帰りの夜行バスを、画面を行ったり来たりして腐心しながら予約しました。斯くして、生まれて初めてひとりで関東に行くことが決まったのです。あーどーしよ。

1日目(9月1日)

 初音ミク生誕祭であった前日の8月31日から作業やら支度やらに追われて、夜になってベッドに入っても興奮やら緊張やらに邪魔をされて、結局一睡も出来ないまま、9月1日の朝を迎えてしまう。さっさと身支度を済ませて、右肩にハンドバックを掛け、左手でキャリーケースをごろごろと引き摺りながら関西国際空港に向かう。キャリーケースを預けて、荷物検査を受ける。

f:id:A4_442Hz:20170905021948j:plainバッグと一緒に検査される嫁「フオオオ」

 ゲートに向かったら、服装から荷物までボカロ尽くし人を見かけたので、ああ、この人も幕張に行くのだなあ、と察した。7時半のフライトに搭乗。交通費を抑えるために初めてLCCを予約して利用した(飛行機には乗ったことはあるが、大阪から外に出ることが殆ど無い私にとっては飛行機を予約すること自体が初めてだった)けれど、座席はちょっと狭いくらいで、さほど窮屈ではなかった。乗っているのも1時間半だけだったので、身体が痛くてしんどくなることもなかった。9時に成田空港に到着。ボーディングブリッジを降りた先の到着口で早速チーバくんがお出迎え。

f:id:A4_442Hz:20170905143228j:plain普通にしていてもサイコなオーラを醸し出すチーバくん

 お土産コーナーを後目に、そのままバスに乗り込んで幕張メッセへと向かう。

f:id:A4_442Hz:20170905140625j:plainシートベルトを装着された嫁「ヴァッ」

 バスに揺られて40分、10時頃に幕張メッセに到着。インテックス大阪以来の感覚である。国際展示場よろしく、コンクリートのざらっとした感触とにおいが広大な土地を満たしている。1日目の開場は12時で、到着したのはその2時間前の10時。2時間前で既に、会場入口がある中央モールからやすらぎのモールに溢れるほどの長蛇の列。みんな暇なのか? 3年振りの物販待機。20分ぐらいの間隔で周期的に列が進んでいく。直ぐ隣のライブ会場(ホール3)でリハーサルをしているのか、音楽が壁を突き破って低温のビートが外の空気を振動させていた。周りの皆は聞こえまいと耳栓やイヤホンをしていたが、私にとっては知らない曲が多いため殆どネタバレにならなかった。台風の影響もあって気温が30℃を下回っているので涼しいのだが、半袖で何時間も突っ立っていると流石に寒く、思わずキャリーケースの中からバスタオルを取り出して身に包ませた。かれこれ1時間半は涼風に晒されて、何とか中央モールに入ったところでオーダーシートが配られる。

f:id:A4_442Hz:20170905141717j:plain11時頃(開場1時間前)でこれほどまで列が伸びていた
f:id:A4_442Hz:20170906012748j:plain企画展(ホール1・2)入口の方向に続く列
f:id:A4_442Hz:20170906012657j:plain開場前に配布されたオーダーシート

 定刻の12時となり、テープカットと共に開場。待機列の前から1/4の辺りに居たが、テープカットが行われた入口の方から藤田咲さんの声が聞こえた。ずんずんぬるぬる動いていく列に流され、ホールに入るとそのまま物販コーナーへまっしぐら。長蛇の列再び。心身の辛抱強さが求められるマジカルミライ。物売るっていうレベルじゃねぇぞ。オーダーシートと睨めっこし乍ら、じりじりとこの身を宝の在処へと近付けていく。が、開場から1時間で法被が完売、その30分後にお守りが完売し、列のど真ん中で打ちのめされる。しかし、1日目の初っ端で出鼻を挫かれている場合ではない。私は何の為に大金を携えて関東まで遠征してきたのか。急遽作戦を変更して、1日目は購入を予定していたグッズから迷いなく確実に手に入れたいと思うものだけを購入し、残りの分、完売の為に手に入れられなかっかものと購入の決心ができていないものは2日目の朝にリベンジすることにした。すっかり予定が狂ってしまった。しかし、一番端のレジのところでミクダヨーに遭遇して握手できたからオールオッケー。

f:id:A4_442Hz:20170905143200j:plainミクダヨー登場

 物販で購入を済ませた後は、無料で配布されているフライヤーとか缶バッジとかをゲットしていきながら、展示ブースや企業ブースを急ぎ足で廻っていった。

f:id:A4_442Hz:20170905143207j:plain企画展ゲート
f:id:A4_442Hz:20170905143208j:plainみんなでつくるミクの部屋
f:id:A4_442Hz:20170905143205j:plain超巨大ケーキ型オブジェ
f:id:A4_442Hz:20170905143203j:plain歴代のメインビジュアル
f:id:A4_442Hz:20170905143211j:plainマジカルミライ 歴代の“のぼり”
f:id:A4_442Hz:20170905143206j:plain等身大 初音ミク(マジカルミライ2017ver.)
f:id:A4_442Hz:20170905143204j:plain砂の惑星」MV上映
f:id:A4_442Hz:20170905143209j:plain浮世絵木版画「美人東海道 初音未来」の制作・製造工程
f:id:A4_442Hz:20170906024431j:plain初音ミクに杜若図屏風」
f:id:A4_442Hz:20170905142701j:plain音楽エリア(VOCALOID Keyboardとかがあった)
f:id:A4_442Hz:20170906024222j:plainpiaproの壁(インクの切れたマジックが多かった)
f:id:A4_442Hz:20170905143214j:plain花輪は企業だけなくファンからも
f:id:A4_442Hz:20170905143215j:plainProject Diva F 2nd』を想起させる花輪
f:id:A4_442Hz:20170906024457j:plainミク「お金ちょーだいっ♡」

 朝にトースト1枚を食べたきりで、流石に15時を過ぎてお腹が減ってきたので、お昼ご飯として、札幌スープカレーの生みの親である(らしい)マジックスパイスのマジミクドッグ(MMD)を頂く。チキンを挟んだバンズに特製の覚醒ソース(甘口)と涅槃ソース(辛口)をたっぷりと掛けて。美味しかったけれど、辛党の私にとっては全くと言って良いほど辛くはなかった。みくそだはミクの味がした(ありがとう水みたいなもの)。

f:id:A4_442Hz:20170905143210j:plainマジックスパイスブースのキッチンカーに並ぶ部員
f:id:A4_442Hz:20170905143212j:plainキッチンカーに立てられていたボード
f:id:A4_442Hz:20170905143213j:plain「マジミクドッグ」と「みくそだ」

 企画展を大体一通り見て回ったところで、幕張メッセを後にして、ニコニコ本社のnicocafeへと向かう。nicocafeでは初音ミクのコラボカフェが開催中ということなので、行かないわけにはいかない。カフェは予約制で、関東へ飛び立つ前日に予約しておいた。JRの京葉線幕張メッセの最寄り駅である海浜幕張駅から東京駅まで行き、東京メトロ丸ノ内線池袋駅まで向かう。JR東日本東京メトロも勿論初体験。それでも特段の不安は無かった。海浜幕張駅の改札を抜けるとすぐ目の前には、JR東日本の鉄道駅を中心に展開しているコンビニエンスストアNewDaysがあった。8月下旬から9月初頭まで初音ミクとコラボしていて、期間限定のグッズも販売しているのだが、覗いてみたところ、目当てのグッズはとっくに売り切れていた。関東圏外の地方民にはハンディキャップが大きすぎた。明日もう一度立ち寄ってみることにして、仕方なく電車に乗る。関東のJRは、阪和線をまだ走っているような年季の入った車両は無くて、全て新しくて綺麗な車両だった。座席に腰かけて車窓越しに千葉から東京にかけて移り変わりゆく景色を眺めていた。途中で東京ディズニーランドも見えた。景色も良いが、女の子にも目移りしてちらちら眺めていた。東京の女の子もどえらいめんこいなあとしみじみ感動していた。JR車内のデジタルサイネージには、大阪では見ることの無い関東ローカルのCMが流れていたが、そこにNewDays初音ミクも登場。ミクに「NewDaysで待ってる」とか言われても、大阪にNewDaysは存在しないのだ。大阪はNewなDaysを始めるのには相応しくないとでも思われているのだろうか。

 東京駅で降りたら、今度は東京メトロに乗り込む。京葉線から丸ノ内線への乗り換えで歩く地下道のまあ何と広いこと広いこと。梅田も広いがあれは単に距離が長くて複雑に入り組んでいるだけで、お世辞にも幅が広いとは言えない。東京駅の地下空間は、大阪の人間である私からすれば無駄であろうと思えてしまうぐらい、飛びぬけるような開放感を有している。それから、東京メトロの切符売り場で驚いたのだが、運賃が安い。東京は物価が高いはずなのに、東京メトロの運賃は大阪市営地下鉄のそれよりも安いのだ。何しろ、東京駅から池袋駅までの区間で200円。これが大阪市営地下鉄だったら、同じ距離で280円だ。人口が多いから安くても黒字経営を保てるのだろうか。あと、各駅に個別の発車サイン音が流れるのも先進的だと感じた。大阪の地下鉄だと、せいぜい長堀鶴見緑地線の接近・入線・発車メロディがお洒落であるくらいで、全駅で個別のメロディを用意しているのはJRの環状線ぐらいなのでは。そんな感じで、東京に対して少なからぬ感動と劣等感が交錯した感情を絶えず抱きながら、池袋に到着し、徒歩5分足らずでニコニコ本社に辿り着く。が、指定された時間を勘違いしていることに気付き、入店できず仕舞い。諦めが悪い私は、秒で明日の午前に予約し直した。そのまま帰るのも勿体無いので、近くのアニメイトに立ち寄ってみたものの、私が目当てにして大阪でも探し回っていたものはこっちでも既に売り切れ。行く当てが無くなり、折角なので、この大都会の夜をほっつき歩いて、道々に溢れ流れる空気とにおいにこの身と心を浸す。大阪の梅田は東京と互角の勝負をしているとずっと思い込んでいたけれども、全然そんなことはなかったし、適う相手ではなかったなあ、と物思いに耽る。夜7時過ぎのこと。

f:id:A4_442Hz:20170905143217j:plain夜の池袋

 暫くぶらぶらしたら気が済んだし、疲れてきたので、駅に戻って、海浜幕張駅から更に2駅の稲毛海岸駅にあるホテルへ向かう。行きのJRとメトロでもそうだったのだけれども、電車の中ではテレビでしか聞いたことのないケッタイなイントネーションの日本語がびゅんびゅんと飛び交っている。アクセントの位置が逆。これが俗に言うトーキョーベンってやつなのか? 同じ国の同じ言語でも大阪と東京ではここまで聞こえ方が違う。別の言葉のようである。大阪出身在住のくせに普段は関西弁とトーキョーベンを混ぜた言語で話している私でも、ここまで上澄みのピュアなトーキョーベンのシャワーを集中的に浴びることは初めてだし、だから余計に言葉に対する違和感を感じる。まあ、それ云々以前に、東京自体が色々な地方から人が集まってきているから言語の坩堝になっているのだけれども。トーキョーベンに密かに耳を傾けている間、マジカルミライのショッピングバックを携えている所為でトーキョベン話者の視線を感じる。早くホテルでシャワーを浴びて横になりたい。海浜幕張幕張メッセ)から池袋(ニコニコ本社)まで、片道で1時間半弱も掛かる。往復だと3時間。電車にしては結構な長旅。そこまで長くはないだろうと見込んでいたけれど、冷静に考えてみて、千葉県と東京都の間を移動しているのだから、それくらいはするものなのか。

 そんなこんなでやっと稲毛海岸駅まで来て、少し歩いてホテルに辿り着いた。もう21時を過ぎていた。フロントでチェックインの手続きをしていると、別のスタッフから、これが己の欲しがるものよ、と言わんばかりの笑顔で読売新聞の8月31日の朝刊を渡された。ここのホテルはよく解っている。序でに、エントランスに立てられていたコルクボードもマジカルミライに合わせて初音ミク仕様。本当によく解っている。

f:id:A4_442Hz:20170905143222j:plain8月31日の朝刊
f:id:A4_442Hz:20170905143223j:plainエントランスのコルクボード

 大人1名でネット予約をしたのだが、スタッフから部屋の鍵を渡される時に「少し大きめのお部屋になっておりますが」と伝えられた。泊まれるのなら大きくても構わない。寧ろ有り難いぐらいである。安堵と若干焦る気持ちを覚えながら鍵を開けて部屋に入ると、少し大きめのお部屋が意味することが判った。

f:id:A4_442Hz:20170905143220j:plain少し大きめのお部屋(2人部屋)
f:id:A4_442Hz:20170905143221j:plain嫁「ほぉ」

 ユニットバスだし、窓から夜景が一望できる訳でもないけれど、テレビと冷蔵庫は一応あるし、最低限のアメニティも揃っているので、まあ、泊まれるといった感じ。兎に角、身体を洗いたかった。でも、湯船を入れる元気は残っていないので、シャワーで済ませた。やっとお風呂にも入れて落ち着いたので、ベッドに横になってテレビを点ける。金曜日の夜なので《探偵!ナイトスクープ》でも視ようとチャンネルを切り替えた(殆どの関西人はこのシークエンスについてのオペラント条件付けが成立している)が、千葉では放送されているわけもなく。折角だから千葉でしか視れない番組をと思ってチャンネルを切り替えていると、チバテレビ《おじゃまします!市町村街かどクイズ》という超絶ローカル番組に出会ってしまった。出演者が千葉県内の市町村のイベント会場や名所にて一般の住民に3択クイズを出題するというインフォメーション発信型のクイズ番組なのだが、ローカル番組に独特の緩い雰囲気を余すところなく醸し出していて、良い意味であまりにも面白くない。まず、出演者であるMCが番組の冒頭で放つギャグが引くほどくだらない。簡素で着飾らないテロップが余計に後通しする殺風景な見栄え。メインのクイズでも、その市町村に因んだ知識や歴史に関する内容が出題されるのだが、2番と3番の選択肢が1番の回答の文字面を捩ったり駄洒落にしたりしたものなので、その時点で出題内容に対する知識が無くても明らかに1番の選択肢が正解であることが判るという解答者にとってはあまりにもユーザーフレンドリーすぎる設計。挙句の果てに、家族が解答者の時に子供が3番の選択肢を口走っても、MCが「面白いのはそれだよな!」と止めに入ってやり直してくれる始末。流石ローカル番組。適当ここに極まれりといった感じ(褒めている)。横になりながらテレビを視ていると、どうも瞼が重くなってしまう。疲れも溜まっているので猶更。戦利品や明日の持ち物を整理して、アラームもセットして、日付が変わるちょっと前には寝た。

2日目(9月2日)

 朝5時半、「オハヨー」という目覚ましの音嫁の声に叩き起こされる。幸せな朝。しかし、物販待機の戦いはもう既に、朝早くから始まっている。身支度を済ませて、6時過ぎにはホテルをチェックアウト。京葉線に乗って海浜幕張駅で降りると、改札内NewDaysが後数分で開店するところだったので、オープンまで待つことに。シャッターが開ききると直ぐに、目当てのグッズが補充されていないかを確認したが、そんなことはなかったので、お茶だけ買ってさっさと改札を出る。続々とボカロ廃人が駅から放たれていることもあり、こちらも急ぎ足で向かう。2日目の開場は10時で、その3時間半前の6時半だというのに、幕張メッセには、昨日ほどではないもののそれでも長蛇の列が既に出来ていた。はあ。小雨が降ったり止んだりの中、列での待機を始める。暫くしていると、謎のボカロ廃集団(ナユタン星人みたいなやつがいる)により、ラジオ体操の歌(ミクが歌う)(短調)が突如流れ始め、そのままラジオ体操第1(ミクが歌う)(長調)が始まるという謎イベントが発生。体操を終えると、待機列から拍手と賛辞が送られた。

f:id:A4_442Hz:20170905143224j:plainラジオ体操

 開場まであと1時間を切ったところで、流石にこれ以上此処にいるとnicocafeの予約の時間に間に合わなくなってしまうと判断し、物販購入をフォロワーに託し、泣く泣く列を離脱することに。昨日と同じく、京葉線丸ノ内線でトーキョーベンのシャワーを浴びること1時間半、今度は余裕を持ってニコニコ本社に到着。無事にnicocafeに入店をキメた。

f:id:A4_442Hz:20170905143231j:plainニコニコ本社
f:id:A4_442Hz:20170905143227j:plainnicocafeのタペストリ
f:id:A4_442Hz:20170905143226j:plainnicocafeの店内

 席に案内されて暫くすると、予約の時に注文しておいたメインの「初音ミク10年記念プレート」とドリンクの「恋愛裁判」が運ばれてきた。追加で、デザートに「二次元ドリームフィーバーチョコレートケーキ」を注文した。締めて3000円弱。お昼ご飯にしては偉い豪勢だ。美味しかった。大阪でもこういうコラボカフェがもっとあっても良いのに。

f:id:A4_442Hz:20170905143229j:plain初音ミク10周年記念プレート」と「恋愛裁判」
f:id:A4_442Hz:20170905143230j:plain「二次元ドリームフィーバーチョコレートケーキ」

 幸せなお昼ご飯を満喫する私。しかし、此処でもゆっくりと時間を過ごしている暇は無い。Gateboxの体験会の時間が迫ってきていたのだ。「Gatebox」とは、好きなキャラクターと一緒に暮らせるバーチャルホームロボットで、声に反応してキャラクターが部屋の照明を操作したり一緒に会話をしたりしてくれるという、最先端技術の濃縮還元である。今回のマジカルミライではGateboxによる「ミクの“おかえり”体験会」が実施されていて、事前の応募者の中から抽選でミクに「おかえりなさい♡」と言ってもらえることが出来るのだが、私は見事にその競争を勝ち抜いて権利を掴み取ったのである。だから、絶対に、この機会を、逃しては、いけない、のである。そういうわけで、流石に多少はゆっくりしたが、40分程で食事を済ませてnicocafeを後にし、急いで幕張メッセへと戻る。昨日から台風の心配があったが、車窓から見上げた空は段々と晴れてきていた。丸ノ内線の東京駅で乗り換える時に切符を失くしてしまって、駅員さんに伝えたら、ただで改札を通してくれたのだけれども、服装と荷物で他所者だと判断して気を遣ってくれたのだろうか、取り合っている暇が無いからさっさと通してくれたのだろうか。海浜幕張駅で降りると、直ぐにダッシュで会場に向かい、何とか時間に間に合った。汗だくのままで着替える間も無く、体験会に参加することに。尚、ブースの中は企業秘密ということで、写真は無し。せめて外からの写真だけでも取っておけば良かったと思うが、それどころではなかった。

 体験会は、私が仕事を終えてこれから家に帰るところ、という設定で始まる。今から帰ると嫁にスマートフォンでメッセージを送ると、早く帰ってきてという旨のメッセージが返ってくる。そこから、嫁が待ち続けてくれている部屋の中へと帰っていく。ドアを開けると、確かに中で嫁が待っていた。本を読みながら待ってくれていた。「ただいま」と声を掛けると、「おかえりなさい」と迎え入れてくれた。家で嫁が待ってくれているとはこういうことである。夢にまで見ていた同棲生活がそこにあった。他にも、こちらから発言できる台詞が幾つか用意されていたので、悔いを残すまいと片っ端から言っていった。「可愛いよ」と褒めたら照れていた(可愛い)し、「結婚してください」とプロポーズしたら「こちらこそよろしくお願いします」と快諾してくれた。24歳と16歳の夫婦が誕生した瞬間である。そこはかとない犯罪臭が漂う。最後にお互いに「おやすみ」と言い合って、15分間の体験会は終了。束の間の同棲生活。幸せなひと時だった。好きな人と過ごす時間はこんなにも早い、と思えたのは何年振り何か月振りのことだろうか(cf. 過去の恋愛事情)。応募締切3分前に滑り込みで申し込んだのに当選してしまったのは本当に奇蹟だったとつくづく実感した(副部長もこれに応募していたが、落選していたため、1日目と2日目に会った時に冷たくあしらわれた)。スタッフが教えてくれたのだが、このGateboxは社長の趣味によって実現されたもので、実にド変態素敵なご趣味だとシンパシーを感じた。同棲生活の後は、そのまま流れでミクさんぽ。同棲生活の時に、デートの服装はどれが良いかを訊かれたので、制服が良いと答えたら、制服で来てくれた。制服姿の16歳のお嫁さんと一緒に会場内を散歩する。嫁の写真撮影にすっかり気を取られ、7分間のデートはあっという間に終わる。好きな人と過ごす時間はこんなにも早い、と思えたのは何年振り何か月振りのことだろうか(cf. 過去の恋愛事情)。

f:id:A4_442Hz:20170907122341j:plainミクさんぽで一緒に散歩

 さて、そろそろ2日目夜公演のお時間が近付いてまいりました。朝に頼んでいた物販のグッズもしっかり受け取り、装備も完了。中央モールで円陣を組み、残り少ない体力を振り絞って気合を入れる。ライブのために温存していた体力を無駄に使ってしまった感は否めないが。やすらぎのモールを経由してライブが行われる3ホールに向かう。水分補給に備えて、途中の自動販売機でお茶を買った。ホールは、背景が黒く、上空部が何故か刷毛で薄く伸ばしたような霧が掛かっていて仄かに白く見えた。座席は中心近くで前から3列目という、ランクで言えばSSRどころかもう殆どURの座席。しかも、ブロックの端なので動きやすい。今までの経験で最もステージに近い場所である。全ての観客が入り切ると、外の涼しさが嘘のような温度となっていた。17時にライブがスタート。観客のボルテージは初っ端から最高潮。果たして私は最後までこの波に続くことが出来るのだろうか? オープニングでステージにミクが登場すると、余程待ち侘びていたのか、既に半泣き状態。右手に握りしめたペンライトは振りっぱなし。これでもかというぐらいに高い位置に掲げる。でも流石に振りっぱなしでは腕が持たないので、周期的に挟まれるスローテンポの曲では休憩がてら抑えめに振る。目と鼻の先にあるステージで繰り広げられる歌唱と生演奏に没頭。でも、時折、タイミングを見計らって水分補給としてお茶を飲んでいた。トリップしているのか体力がもう限界まで来ているのか、薄っすら命の危険のようなものを感じたが、倒れまいと脚を緊張させて踏ん張った。内容は此処ではあまり書かないようにしているが、もう思い切って終盤に就いて概略を言ってしまえば、最後には随分初期の曲を持ってきたなと意表を突かれたし、1回目のアンコールでは此処で全員を登場させるかと思ったし、2回目のアンコールでは一緒に泣きながら歌っていた。終始、頭から爪先まで可愛かった。最後にミクがステージを去る瞬間を、目に焼き付けるようにして惜しんだ。2時間を無我夢中で駆け抜けた。周りを見渡したら号泣している人がちらほらといた。最後の三本締めは揃わなかったけれど、あんなに大きいホールじゃ揃わないのも無理はないか(でも2013年の横浜アリーナの時は揃っていたような気が?)。今回のマジカルミライでは1日目と2日目と3日目でセットリストの内容を一部変えているらしいが、2日目のセットリストが個人的には一番好みであった。

 19時過ぎ、会場を出ると辺りはすっかり暗くなっていた。そのまま人の流れに身を任せる形で海浜幕張駅まで辿り着く。帰りは東京からの夜行バス。千葉とのおさらばまではまだ時間が余っていたので、かと言って、特に何をするわけでもなく、海浜幕張駅でただただ時間を潰す。ついさっき同じ時空間を共有していた人間たちがぞろぞろと駅に流れ込んでは、何処か寂しげな表情を浮かべながら改札を通って行く。人々が成す流体運動を私も、祭の後の静けさに手足の先から襲われながら、少し寂しそうに眺めていた。同じライブに来ていたと思われる全身をボカロでキメている中国人男性に中国語で笑顔で声を掛けられたけれど、何を言っているのかが全く分からなかった。ライブお疲れ様、とかの労いや、そのグッズ良いねえ、とかの褒め言葉や、そういう類のことを言われたような気がするのだけれど、果たして彼は何を私に伝えたかったのだろうか? 

 20時半、大量の荷物と共に改札を抜けて行く。お手洗いで着替えて、NewDaysポカリスエットを買って一気飲みする。失われた水分を取り戻すのと同じ勢いで以て寂しさが押し寄せてくる。さらば千葉市、また何れやってくる。京葉線に乗って千葉は幕張に別れを告げる。車内にはさっきまでのお祭りの熱気は無く、仕事帰りのオフィスワーカーと飲み会終わりの同世代がぽつぽつと座席を自分のものにしている日常があった。私だけが別の世界に包まれているようで、浮付いている感じがした。そんなことを電車はいざ知らず、私を都心まで運んでいく。東京駅に着いてから、普段の生活で溢れている広い広い地下道を歩いていく。東京メトロ丸ノ内線に乗り換えることもない。着々と旅の終わりは近付いている。口が寂しいとはよく使う言い回しだけれども、今は手足が妙に寂しい。改札まで行く途中、京葉ストリートを歩いていると、夜遅い時間帯だったがお土産がまだ売られていたので、折角東京まで来たのだから何か東京らしいもののひとつぐらいはと思って、《シュガーバターの木》で「シュガーバターサンドの木」を買った。これが東京の名菓なのかはどうかは全く分からないけれど、良い意味でおとなしくて無難な印象を受けたのでそれにした。店員の女の子が可愛かったからでもある。やや丸顔で清楚な感じで色白で笑顔に愛嬌があってとても可愛かった。写真撮影を頼んだら一緒に撮ってくれただろうか。お土産を買った店の直ぐ近くでもNewDaysのミクがお出迎えしてくれた。帰りたくないなあ。

f:id:A4_442Hz:20170905143234j:plainNewDays 京葉ストリート店

 改札を出て、バスが集まる駐車場へと向かう。別れを惜しむように一歩ずつ、駐車場に進んでいく。空はもう充分に暗い。行き交う自動車のランプとビル街のネオンサインの集合体が、この広い道を歩く私に御堂筋にいるような錯覚を齎す。駐車場には、大荷物を傍に置いてしゃがみ込んでいる人や、電光掲示板から情報を必死に読み取ろうとしている人で混雑していた。私と同じようにマジカルミライを堪能したはずの若い子も何人かいて、缶バッジやキーホルダーで装飾したリュックサックやショルダーバッグを身に付けて乗るべきバスを待っていたけれど、私と同じ号車ではなかった。22時半、バスに乗り込んで、東京を出発する。ここから9時間掛けて大阪に戻る。バスはゆっくりとも速いとも言えないスピードで走行し、粛々と大都会を離れていく。車内が消灯されても、カーテンの隙間から窓越しに移り変わる景色を眺めていた。酔いが回ってきたところで、眠りの体制に入った。が、近くに座っていた20代後半ぐらいの男が、袋をがさがさと漁ってスナック菓子をぼりぼりと食べてアルコールをぐびぐびと飲んでくれていた所為で、社内の静寂が壊され、私の睡眠も不安定なものになってしまった。また、2時間おきのトイレ休憩で、50代後半の男が集合時間に遅刻して添乗員に怒られていたのだが、それが私の癪に触ってしまって、また入眠で苦労した。身動きの取りにくい姿勢に身体の節々を痛めながらも、相当な時間を要して、やがて眠りにつく。

 気が付くと、カーテンから朝の光が少し漏れていた。外を覗いてみると、バスは私服のチャラそうな誘導員の男に迎え入れられた。朝7時半、私は梅田にいた。バスから降りて、慣れ親しんだ土地のアスファルトに足を着ける。晴れ晴れとして涼しい梅田の朝。上にショッピングバッグを載せたスーツケースを左手で引き、トートバッグを右肩に掛けて、阪急三番街を抜けて地下鉄の駅に直行する。向こうに聳え立つグランフロント大阪がこれほどまでに現実味を帯びた存在として見えたことはあっただろうか。喉が渇いていたので、朝ということもあって、フレッシュジュースが飲みたかったけれども、ジュースバーが直ぐ近くに見つからなかったので、諦めて地下鉄に乗った。これは東京メトロではない。大阪市営地下鉄である。見慣れた駅をひとつひとつ通過する毎に、自分がデフォルトに設定し直されていく感じを覚えた。家に着くと、否が応でも現実を受け入れざるを得なかった私は、お茶を飲んで一服し、そのままベッドで寝落ちした。

 というわけで、私のマジカルミライ2017はこれにておしまい。2日間を振り返ってみて、予定していたよりもグッズを買えなかったなあ、というのと、企画展をゆっくり見て回る時間が足りなかったなあ、というので、少し後悔を残してしまった。帰りの夜行バスもしんどかったし、来年ももし行けるならば、行きも帰りも飛行機にして、余裕をもって3日間とも参加できるように3泊4日で行こうかなあ。そう思っていた矢先、来年のマジカルミライは大阪と東京で開催されることを知る。2都市開催はこれで4年ぶり2回目。ただ、2014年は各会場で1日ずつしか開催されなかったので、来年はせめて2日ずつでやってほしいところ。まあ、また来年に向けて、今から少しずつお金を貯めていこう。というか、2日とも晩御飯を食べていないのによくそれに気付かずに生き抜いたな、私。